不動産投資で収益物件はいつ売却する?どの位の期間所有すべきか?最適なタイミングとは
不動産投資で売却を考える最適なタイミングとは?
以前、別の記事で「不動産投資の成否は出口戦略で決まる」という内容を書かせていただきました。その記事の要点をお話しすると、収益物件を手に入れてから最終的に売却する出口を迎えなければ、その投資の利益または損失を確定しないという事です。
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そこで収益物件はどの程度の期間所有して売却するのがベストでしょうか。
成功と言える出口は、投資としての期待リターンを得られたかという事になります。もちろん出口には損切りしなくてはいけない事もあるかも知れません。他の投資への資金調達のために、または生活資金を優先して用意しなくてはいけない場合もあるかと思います。さらに市況によって高値で売れやすい時期と、そうではない時期もあるかと思います。であると所有の期間と売却の時期は、人それぞれ、物件によりけりとなってしまいます。その前提がありながらも適切な売り時はいつか?また平等に不動産投資の売却益にかかる税金から節税効果が最もある、投資効率を最大化させるタイミングについて、①市場 ②物件 ③所有は個人か法人かの税金、税制面での違いの3つを解説します。
市場から見たタイミング
不動産に限らずですが市場が活況の時は売却のタイミングと言えます。
不動産の価格相場が上昇しているとき
路線価や取引価格が上がっているのかを把握しましょう。また取引件数など前年と比べてどうかも調べる事は出来ます。
金利低下
金利が下がれば、利回りが低くても収支がプラスになります。よって価格が割高でも購入する層が増え売却価格も上昇します。
金融緩和
金融機関の評価額や融資スタンスなどが緩和されることによって市場が活性化し価格が上昇します。
物件から考えるタイミング
売却額>ローン残債
ローンの残債を上回る売却額であるかどうかです。残債を残した売却となるとその分を全額返済しなければならなくなるためです。
利益確定できる時
売却する事により、家賃によるインカムゲインとあわせて収益がトータルでプラスに、つまり利益確定できるのであれば売り時と言えます。
損切りが必要な時
その物件がマイナスの収支になっており、改善が見込めず投資の目的に合致しないのであれば早期撤退を検討する時です。
入居者がいる時
空室で売るよりも、入居者がいる時、特に満室であるほうが売却額は高くなる傾向があります。
相場より高い家賃が取れている時
相場より高い家賃が取れている時は、利回りから価格を設定するので通常よりも高く売れる可能性があります。
退去した時
敢えて原状回復や内装などリフォームをせずコストを掛けずに売却をします。売却価格に反映できない負担はせずに現状渡しをする考え方です。
大規模修繕の前
大規模修繕などは名前の通り、コストも大きな規模となります。それが発生するタイミングの前を狙って売却をするのも手です。
減価償却できる期間が終了するタイミング
キャッシュフローに影響する「減価償却できる期間」が終了するタイミングで売却する。
減価償却が終了すると、経費計上出来ていたものが無くなる、つまり所得が上がり課税対象の所得が上がります。ですのでその期間が終了になるタイミングは売却に適した時と言えます。
デッドクロスを迎える時
詳しくは別の記事で解説しますが、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態を「デッドクロス」といいます。ローンの利子は経費になりますが、元金は経費計上できません。帳簿上は利益が出ているのに、利益に課される税額が増えるために、実際の利益は減少している状態です。
物件の所有者が個人か法人かによってタイミングは変わる
個人なら5年超の長期譲渡のタイミングでの売却がベスト
個人での活用なら、5年超の保有後に売却するのが最も効果的であると言えます。
物件の所有者が個人の場合は、収益物件の保有期間によって売却益にかかる譲渡所得税の税率が異なります。
短期での売却だと税率が約40パーセントですが、5年を超える長期になると約20パーセントになります。
譲渡所得税率
長期譲渡所得税 20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
短期譲渡所得税 39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
税率がおよそ半分になるので、個人の所有であれば短期譲渡ではなく、長期譲渡になるのを待ってから売却するのが税金の面では効率的だと言えます。 その時の市況や相場も関係してきますので、売却価格も含めての判断になりますが、相場が一定であるとの前提であれば、長期譲渡のタイミングを迎えてからの売却が最も効果的となります。
特に高額所得者にとっては、保有中は総合課税での減価償却を行い、物件売却時には分離課税のため税率が20パーセントに抑えられているので、非常に節税効果が高くなります。
この税率のギャップによって利益を最大化することが可能です。
長期譲渡に関して注意すべきなのは、購入した日から満5年間ではなく、保有後6回年を超すこと、1月1日時点で5年超所有していることが要件となることです。満5年保有していても、年を越したのが6回未満であれば短期譲渡となりますので要注意です。
個人所有の不動産の複数売却で損益通算し節税
個人の譲渡所得は分離課税ですが、 同年に他の不動産を売却して損失があれば、その損失の金額を他の物件の譲渡益の金額から控除できます。
つまり、個人で複数の物件を所有している場合は、売却することで利益が出る物件と損失が出る物件を同年に売ることで、譲渡益の金額から損失分を向上できるため、さらに効果的に節税ができるということです。
明らかに売却損が出る物件を所有している人は、この機会に同時売却をする事を検討しましょう。
あくまでも不動産という枠の中の控除だけが認められています。他の給与所得、事業所得などとは損益通算できないので注意が必要です。
法人所有の場合の適切な売り方とタイミング
法人で物件を所有している場合は、所有の目的別に出口戦略が変わってきます。法人の場合は個人と違い売却益も総合課税になります。本業あるいは他の物件とのバランスを見ての売却となります。
節税目的の場合
まず節税を重視する場合、法定耐用年数を超えた木造アパートですと、4年を超えて減価償却の旨みが減った物件から売却し、 新たな物件を入れ替えで購入していくという戦略が考えられます。そうすることで、減価償却の節税効果を切れ目なく継続させることができ、理論上は課税の先延ばしを延々と続けることができるからです。
また、法人で複数所有しているケースでは、同一年度内に大規模修繕で赤字が出る物件の修繕に合わせ、売却益が出る他の物件を売り、結果として損益を相殺させるといった手法も活用できます。
不動産賃貸業以外の本業を補完する場合
本業の資金繰りで資金が必要になった場合や、利益を出したい時には、売却して売却益を得るという方法もあります。
いずれにしても、収益物件が法人での所有の場合には、会社経営に活用や補完することで大きなメリットを享受することが出来ます。
不動産投資を個人でやるか法人でやるかの違いについての記事は下記をご覧ください
不動産投資物件売却のタイミングについてのまとめ
不動産投資での物件の所有期間、売却のタイミングについて解説をしました。
市場、物件、個人か法人か、それぞれポイントを挙げさせていただきました。最適な時期を見極めて判断するのは投資家自身になります。この記事のポイントをチェックリストとして活用いただき、それぞれ最適な売却タイミングを検討して頂ければ幸いです。