不動産投資の賃貸管理

不動産投資で大家さんに有利?定期借家契約とは?

不動産投資で大家さんに有利?定期借家契約とは?

定期借家契約とは?

定期借家契約とは、2000年(平成12年)に施行された定期借家制度に基づいた契約で、優良な賃貸が供給されやすくなることを目的として導入されました。賃貸借契約で定めた契約期間が満了すると契約は終了。ただし、貸し主と借主の双方が合意すれば、再契約が可能というものです。
これにより大家さんである貸主は従来の「普通借家契約」と「定期借家契約」を選べるようになりました。

 

なぜ定期借家制度が導入された?

従来の普通借家契約では、大家さんである貸主(賃貸人)は正当事由が無ければ、解約や借主(賃借人)からの契約の更新を拒むことができません。借地借家法は借主(賃借人)を保護する法律なのです。そのために、普通借家契約は契約期間が不確実なだけではなく、家賃改定の難しさ、立ち退き料などのコストが掛かるなど、大家さんである不動産投資家にとっては収益見通しそのものが不確実性の高いものになっていました。その結果、賃貸住宅は回転の早い狭小な物件の供給に偏り、空き家の有効活用にも至ってないとの見方も示されています。
定期借家制度が導入された狙いは、良識のない借主に居座られたり、退去してもらうために多額の立ち退き料が必要になるなど、従来までの貸主の不利を是正することです。この制度により、貸主が安心して貸せるようにすることで、良質な賃貸住宅の供給増を促そうとしているのです。

 

定期借家契約で賃貸契約した人の割合は?

施行されて20年以上経った定期借家契約ですが、借主の認知としては高くありません。
国土交通省による令和4年度(2022年度)住宅市場動向調査によると、2021年 4月~2022 年3月の間に、賃貸住宅に住み替えをした人で知らないと回答した人が61.3%と半数以上を占めています。また、同調査で住み替えた際の賃貸契約の種類について、「定期借家契約」と答えた人は僅か2.1%でした。この数字は、借主に定期借家契約というものがあるという認知不足や、不動産会社から説明がなされていないことが推測されますが、最たる理由は定期借家契約のメリットを理解し採用する大家さんが少ないと言う事が挙げられるのではないでしょうか?

 

 

※国土交通省2022年度_住宅市場動向調査より引用

国土交通省|2022年度_住宅市場動向調査

 

 

貸主の為に作られた定期借家制度はメリットしかない

普通借家契約定期借家契約の違いは、契約期間の定めがあるかないかです。普通借家契約は、原則として契約期間の定めがなく、借主が合意なしに退去することはできません。一方、定期借家契約は、契約時に契約期間が定められており、契約期間が終了すると自動的に契約が終了します。
この違いにより、定期借家契約は、大家さんにとって以下のメリットがあります。

 

空室リスクの低減

契約期間が定められているので、借主が合意なしに急に退去する可能性が低くなります。また、契約期間が終了する前に借主が退去する場合は、更新料を請求する特約を付けることができます。
例えば、築年数が経過した物件や、人気が少ないエリアの物件を賃貸する場合、借主が退去する可能性が高くなります。このような物件を賃貸する場合は、定期借家契約を締結することで、空室リスクを低減することができます。

 

家賃改定の自由度が高い

契約時に家賃改定の条件を定めることができるため、市場の動向に合わせて家賃を改定することができます。また、普通借家契約では借主が強く保護されており、賃料不増額特約を定めても効果が認められず、借主による賃料減額を阻止する方法はありません。
例えば、物件の周辺の賃料相場が上昇した場合、定期借家契約を締結することで、家賃を適正な水準に引き上げることができます。

 

建物の建て替え、改装や修繕がしやすい

契約期間が終了する前に借主が退去する場合は、原状回復義務がないため、建物の改装や修繕を自由に行うことができます。
また
例えば、物件をリフォームして賃料を高くしたい場合、定期借家契約を締結することで、借主の同意を得ずに改装や修繕を行うことができます。

 

立ち退き料が不要

建物の建て替えや、土地としての売却などで、借主に退去を求めるには、貸主の都合だけでは認められず、建物の老朽化などの正当事由が必要になり、裁判になる事も少なくありません。立ち退きが認められた場合も、借主には家賃の6か月~1年分相当の立ち退き料を払う事になります。アパートなどで複数の借主が普通借家契約で住んでいた場合、収益性の観点から、建て替えやその為の解体の前におおきなコストが掛かってしまう事が定期借家契約ではありません。

 

定期借家契約にデメリットは無いのか?

これほどまでに、従来の普通借家契約にないメリットがあり、収益性や資産性を重視する不動産投資においては良いことづくめに見えますが、デメリットはないのでしょうか?
唯一デメリットと言えなくもない事が、「家賃が相場より安くなる」と言う事です。貸主側にメリットが多いので、貸し出す際の家賃設定を貸主自ら相場より安くしてしまう可能性があります。ところが、アットホーム株式会社の「2020年度 定期借家物件の募集家賃動向」によると首都圏の戸建てにおいては、全エリアで定期借家物件の平均募集家賃が普通借家物件の平均募集賃料を上回るという調査結果が出ています、
エリアや物件種別によっては家賃低下の可能性をそこまでデメリットと感じずに定期借家契約を選択できるのでは無いでしょうか?

 

2020年度 定期借家物件の募集家賃動向「アットホーム調べ」

 

 

不動産投資では定期借家契約を計画的に取り入れよう

以上のことから、不動産投資で大家さんにとって有利な契約は、定期借家契約であると言えます。築古アパートの建て替えや処分を考えているある不動産投資家は、あるタイミングから退去の際の客付けは定期借家契約に限定し、たとえ相場より家賃が下がっても不要な立ち退き料が掛からずに計画的に空室タイミングを揃える事を行っています。またある民泊物件オーナーは、民泊営業できる既定の日数を超える部分は、マンスリーやウィークリーでの賃貸をこの定期借家契約で行って収益を最大化しています。そして、借主にとっては短期ニーズを満たすリーズナブルな物件になる可能性もあり、一概に借主不利というものではありません。
注意点は、普通借家契約と違って、定期借家契約には書面による賃貸借契約書が必要です。また契約書とは別途で細かい条件を説明する書面も用意する必要があります。
具体的な契約内容については、定期借家契約を理解して一緒に進める事が出来る不動産会社の選定や弁護士に相談するなど自分の投資目的や状況に合った契約を締結することが大切です。定期借家契約を取り入れて充実した不動産オーナーライフを!

 

 

プロフィール
アイカワ編集長
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士  広告会社に勤務する異色の不動産投資大好き編集長。 自らの知見と大家さんのネットワークで得た、不動産投資家にとって本当に役に立つ情報の発信を心がけています。
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